鼻腔共鳴の誤解
私の生徒さんにだけ伝えていた方法をなぜ今までSNSやブログで公開してこなかったと言いますと、別に出し惜しみをしていたわけではなく、何というか、言いたくても言えない環境に有ったから?ですかね…(;^_^。
なんて言うか・・・
「魔女狩り」が怖かったから?(笑)
腹式呼吸
喉を開ける
というような、日本では当たり前とされてきたことに異を唱えるのは、
いくら僕でもなんだか憚れましたし、
何より生徒さんたちが非難を受けないようにする必要があったからです。
以前は、
「腹式呼吸は10年早い。まず肺にしっかり息が入るようになってから。」
とごまかした言い方をしながらレッスンしていましたが、最近はそれも時間の無駄なので、
「腹式呼吸をやめることから始めましょう」
と言うようになってきました。歳のせいでしょうか?(笑)
何故腹式呼吸をやめることが必要なのかを説明しなければならないので時間は割かれますが、結局その方が近道になることが分かり、今では気にせずハッキリ言うようにしています。
現在発声についての概念が混沌とした状況に有るのは何故なのかは置いといて、
「やっぱり!そうだったんだ!」
「おかしいと思ってた!!」
という人たちの背中を押すことができ、さらに自信につながることになれば本望でございます。
鼻腔共鳴の落とし穴
ネットで発声やボイストレーニングの記事や動画でよく目にし、その間違いに心を痛めることが多いのは、呼吸、声帯、に続き「鼻」と「口」についてです。
今日は「鼻」について書こうと思います。
ボイストレーナーには声楽を学んだ人が一定数いらっしゃいます。
ボイトレ先進国であるアメリカで学んだトレーナーが慎重に誤解なくその理論を輸入すれば今の状況はもっと違ったと思いますが、
声楽という主に「口伝」や「感覚」で伝えられてきた方法しか知らない方々が安易に「感覚」で教える。
これも混乱の元になっていますね。
その最たるものが「鼻腔共鳴」についてでしょう。
これは、声楽を学んだ人から流れ込んできたものです。
実は、
これが日本人にとっては鬼門といっていいほどの落とし穴になっています。
「鼻腔共鳴」と「鼻に響かせる」の違い
ネットでボイトレの記事や動画を見て「あ~あ、それじゃ声出なくなるじゃん」と思う事の一つに、
「鼻腔共鳴」についての間違いが有ります。
特にベルカントではこの「鼻腔共鳴」は大事な要素です。
ですが、日本人が鼻腔共鳴を得るためにはイタリア人とは違う方法を取らなければなりません。
鼻腔共鳴とは、
顔面の眉間から頬、耳の前(目の後ろ)にかけて有る8個の空洞(副鼻腔)に声を共鳴させる。
という方法です。
これにより声が増幅され響きが豊かになります。
ですが日本人の場合、「鼻に響かせる」という意識ではこの「鼻腔共鳴」を得ることが出来ません。
「鼻に響かせる」
と
「鼻腔共鳴」
は違うのです。
日本人の声の特徴
日本人の声の特徴の一つに「鼻声」という要素が有ります。
日本人はそれが当たり前になっていますので自分が「鼻声」だということに気づいていません。
日本語は「鼻濁音」を持つ言葉であり、
日本人はデフォルトで常に鼻に息が漏れています。
常に鼻声なのです。
日本人の優しい話し方を構成している要素の一つが、
常に口と鼻に息が分かれていること(鼻に息が漏れていること)です。
鼻に息が漏れている状態を矯正しないまま鼻に響かせようとすると、
鼻声が強くなるだけ。
ナザーレとは違う響きになってしまいます。
しかも鼻で生じる息の圧力が声帯に戻り、声帯の振動を阻害してしまいます。
結果、声が重くなってしまいます。
鼻の響き
いわゆる「鼻の響き」には二つの種類がある。
歌の分野では、現時点ではそのように理解してい頂いてよろしいかと思います。
ここでは「鼻の響き」と「鼻腔の響き」と呼んでおきましょう。
困ったことに、この間違った「鼻の響き」は時に、
とても派手で強い声を作り、艶のある美声を作り出します。
トレーナーも生徒自身もこの響きに騙されてしまうのです。
しかしながら、これが強くなっていくと
声がいくつかに分かれて聞こえるようになったり、
声帯を通る息のスピードが遅くなり、
さらには鼻で作られた息の圧力が声帯の振動を阻害し、声が重くなっていきます。
大きな落とし穴が有るのです。
正しい「鼻腔共鳴」は、
完全に口から出た声が顔の表面(上の前歯の付け根辺り)を振動させ、
骨振動的に空洞(副鼻腔)に到達し、空洞(副鼻腔)内で反響する。ものです。
大事なのは、完全に息が口から出ることです。
口から完全に声と息が出たその先に、顔の中の共鳴ドームが響く感覚が待っています。
間違っても「鼻を狙って」声を出してはいけません。
鼻腔共鳴の為のトレーニング法
鼻腔共鳴のトレーニング法
正しい「鼻腔共鳴」の為に必要なのは、大前提として
「鼻の響き」を取ることです。
つまり、鼻に息を漏らさず声を出すこと。
これが日本人にはハードルが高いのです。
目安は、
鼻をつまんだ時とつまんでいないときの声の響きが同じであること。
鼻をつまんで「Ma Mi Mu Me Mo」と言った時に
「Ba Bi ~」と聞こえないこと。
↑これを目指しましょう。
そのためには、鼻栓をする以外有りません(笑)
鼻栓をした状態(鼻をつまんで)でリップロールでアリアを歌えるように頑張ってください。
鼻をつまんでリップロールをすると、息の通り方が変わってきます。
声帯を通る息の種類が変わっていくのを感じると思います。
声帯が立ち上がってくるように感じる人もいるかもしれません。
様々な違和感を感じてくるでしょう。
変化を「違和感」と感じるのは、あなたがまだ「その世界」にいるからで、
「もっと先の世界」に進んだ時、逆の感覚になることでしょう。
トレーナーの役目はそれを、間違わずに、早く進めるようにお手伝いするに過ぎない。
自分の声を変えられるのは自分以外いません。
変化を恐れずに受け入れ、先の世界に有る素晴らしいものを、
是非とも手に入れて頂きたいと思います。
補足
補足
鼻への息漏れが無くなっていくと同時に、今まで持っていた鼻の響きも無くなっていきます。
これがあなたにつらい思いをさせるかもしれません。
なんとも「つまらない声」で「しらっちゃけた声」に自分には聞こえるでしょう。
でも、鼻への息漏れがなくなっていき、
鼻濁音を持つ日本人の話し声ではなく、「h」の発音を持たないイタリア人のような話し声になってくると、
声が明らかに違ってきます。
そのもっと先で本当の「鼻腔共鳴」があなたを待っています。
自分の耳に騙されないように。
皆さん!頑張ってくださいね!!
終わりに
歌の勉強が独学では無理なことの大きな理由は、「リアルタイムで自分の声を聴くことができない」ことに有ります。
人は外に出ている声と自分の体の中で響いている声の両方を同時に聞いています。
しかし他人は「外に出ている声」しか聞こえません。
これが歌の勉強においての大きな壁となるのです。
「じゃあ、外に出る声を聞けばいいならマイクを使えばいいじゃん?」と思うかもしれませんが、
理屈としては悪くないですが、マイクを通すとスピーカーから聞こえてくる声と体の感覚に解離が生じてしまい、トレーニングには適しません。
トレーニングは一人で黙々と頑張ることですが、そのトレーニングが間違っていなかったか?そのトレーニングの効果が正しく表れているか?
チェックしてくれる他人の「耳」が必要です。
歌の勉強には信頼できる「耳」となってくれるトレーナーが必要なのです。
自称ボイストレーナーがどのような経緯でボイストレーナーをなさっているのか僕にはわかりませんが、その多くが本当に良くテキストを勉強されているようです。
こちらが恐れ入っちゃう位に色んな言葉を知っていて感心してしまいます。
ですが、少し掘り下げた話になると「?」となる(笑)
しかも、レッスン動画などを見ると( ゚д゚)ポカーンとなる。
まぁ、
知らないよりはマシと思うしかないですね(;^_^A
日本のトレーナーは、
知識は有っても診断力(耳)が圧倒的に弱いように見受けられます。
「診断」して「処方」するのではなく、ある決まったメソッドやセオリーをやらせているだけ。
というのが多く見受けられます。
リップロールのように間違っていてもある程度の効果が有り事故の要素が少ないものなら問題ないですが、エッジボイスのように事故の要素が大きいものの場合は心配してしまいます。
診断力(耳)は体感を伴わないと育ちません。
体の中で起こっている微妙な変化(それこそ1ミクロンの世界です)を知らないと、トレーナーに必要な「耳」は育たないのです。
歌手と指導者のスキルは違う。
という言葉を耳にします。
その通りだと思います。
でもこれ、最近では違う意味で使用している人がいるようですね。
正しくは、
歌手=歌うスキル
指導者=歌うスキル+教えるスキル
です。
「歌手と指導者は別物」という言い訳が許されるのは、歌手だけなのです。
事故や病気で歌えなくなった場合は別として「歌えない=教えられない」です。
指導者・トレーナーの皆さんには、
「私は教えることも出来る歌手である」と胸を張って言って頂きたいと思います。
歌えないトレーナーにはくれぐれもご注意を。
次回は一番厄介な「口の開け方」について書こうと思います。
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今日の耳の矯正動画
え?鼻に響かせようとしてる声に聞こえる?
それはあなたが「鼻声」だからです。
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