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腹式呼吸という呪い、その3。~海外に腹式呼吸は有るのか?前編~ヴォイストレーニング!呼吸シリーズ③

ベルカント

腹式呼吸は外国語で何て言う?

「腹式呼吸」

ボイトレやオペラやミュージカルのレッスン、最近では舞台俳優のみならず声優の分野でも、日本では当たり前のように使われている「腹式呼吸」という言葉。

腹式呼吸はボイトレ先進国であるアメリカや、オペラの国イタリアでは何と言うのでしょうか?

約20年前になりますが、アメリカで「セス・リッグス」氏という大御所ボイストレーナーの元で歌を勉強したロサンゼルス在住の現役歌手に、こう質問されました。

「ねえ、腹式呼吸って何?」

僕は逆に「え!?」となりました。

さらに彼女は続けます。

腹式って英語でなんて言うのかしら?スタマック?アブドミナル?何だ?
 腹式呼吸っていう英語は無いのよね・・・」
と。



僕:「(何?腹式呼吸っていう英語は無いだと?)」

少しパニックになったのを覚えています(笑)

彼女の「腹式呼吸っていう英語は無い」というのは、もちろん歌の分野でのことなのだろうけど、それにしたって

「歌を勉強するのに「腹式呼吸が無い」ってどういう事だろう?」

「ポップス発声は声楽よりも未熟な発声なのか?いや、ポップスとクラシックの違いは体というより喉の要素の方が大きいし・・・」と頭の中でグルグル。

はい。この、


「腹式呼吸っていう英語は無い」事件

はとても印象に残った出来事でした。


20年前はそうだったのです。



腹式呼吸を英語で

2020年5月現在、腹式呼吸を英語で何と言うのか調べると、


Abdominal breath
Belly breath
Diaphragm breath


と出てきます。

表記により(文法により?)
~tic breathing とか breath by ~とか。

いずれにせよ、自然呼吸のEupnea のようにギリシャ語由来ではありませんから近代に作られた言葉です。

Abdominal breath (お腹の呼吸)について

「おなか(お腹)」

改めて考えると日本語の「お腹」は実に多彩な言葉です。

お腹がすいた。(hungry)
お腹が痛い。(stomach ache)
お腹を下す。(diarrhea)
腹筋。(abdominal muscles)
お腹が鳴る(stomach grumbling、growling)
お腹が出る(potbelly、big belly)
お腹いっぱい(full)
腹が立つ(get angry)


いかがですか?上記の言葉だけでも、日本語と外国語の差異はとても大きいですね。
ではこれはどうでしょう?

Hungry(飢え、空腹)
Stomach ache(胃痛)
Diarrhea(下痢)
Abdominal muscles(腹筋)
Stomach grumbling(胃のゴロゴロ)
Potbelly、big belly(ビール腹、出っぱら)
Full(満杯)
Get angry(怒る)


同じ言葉のままのものもあれば違う言葉のものもありますね。

お腹が痛い→stomach ache→

というように、「お腹」が「胃」に変わってしまいます

注意しなければならないのは、英語のみにかかわらず外国語に日本語をラベリングする際には、ちょいと気を付けないと意味を取り違えてしまう人もいる、ということです。


では本題、
Abdominal breathはどうでしょう。
僕の記憶だと一番新しい言葉です。

Wikiると
Diaphragm breathにリダイレクトされます。
誰かが何かの目的のために作った言葉でしょう。

ということで論外。



Belly breath (お腹の呼吸)について


Belly breathに参りましょう。

これはベリーダンスのベリーですね。そもそもベリーダンスも造語です。

現地の言葉ではラクス・シャルキーやラクス・バラディーといいますが、

何故か英語ではベリーダンス(腹踊り)とラベリングされています。
ちょっと・・・なんだか・・・って感じですね。

これもwikiるまでもないと思いますが、念のためwikiると、Abdominal breath と同じようにDiaphragm breathにリダイレクトされます。


新しい商品を開発する時には必ず新しい名前ができます。
これからもいろんな「breath」が作られていくと思います。

abdominal breath もbelly breathもそういった類のことだと思いますが、

注意したいのはabdominalは「お腹の」という漠然とした範囲に対する形容詞で、名詞としても使われますが、どこかの特定の器官、内臓や筋肉などを指すものではありません。
腹腔域全体を連想させる言葉です。

bellyについても同様ですが、こちらは「おへそ」まわりを連想させる言葉です。

二木氏の腹式呼吸と照らし合わせると、これらを腹式呼吸と訳す、あるいは腹式呼吸をabdominal breathと訳すのは、まあOKラインだと思います。


毎回言ってますが、
問題なのはこれが歌の呼吸なのか?ということ。


さらに、Abdominal、bellyともDiaphragm breathにリダイレクトされています。

Diaphragmとは横隔膜のことです。
横隔膜は胸腔内にあります。腹腔でもおへその周りでもありません。
たとえメソッド的にはそんなに違いが無いのだとしても、abdominal とかbellyという言葉はDiaphragmとは明らかに違う部位を指しますから、同じ意味で使用してはいけませんね。



商品名や商品のコピーとして「名称」を作り出すのはいいのですが、 年月とともにその意味はあやふやになり、
「Abdominal breathとは」みたいな、初めに「言葉」有りきで物知り顔で語る人が出てきたり誤解を生む結果になってしまいます。

こういう色々な「言葉」のせいで、近年のボイトレ理論が飽和・混沌状態となり、いわゆるボイトレ被害者が大量に発生する要因の一つになっていると思います。

後編(Diaphragm breath)に続く



Claudia Muzio "Ebben"「Wally」1920 クラウディア・ムツィオ"さようなら故郷の家よ"「ワリー」


なんと華やかな声でしょう。
え?こもって聞こえる?
耳大丈夫ですか?
(耳の矯正)





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